惑星学は太陽系における地球及び惑星の起源と進化を明らかにする学問です.太陽系惑星の探査が急速に発展する中で火星,月などのリモートセンシングは地球観測と比べてもひけをとらないくらい充実してきました.さらにその探査は水星から冥王星まであらゆる太陽系の惑星,小天体に広がっています.近年においては天文観測の発展により太陽系外惑星系も発見されるようになり,その研究領域は我々の太陽系を越えて広がるようになってきました.
それでもやはり地球というのは別格です.その進化の過程で生命を育み我々人類の誕生をもたらした地球の研究というのは最も興味あるところです.地球の進化を調べるためには,地球の仕組みを知る必要があります.46億年前に誕生した地球に海と大気が作られ,金属核が分離し磁場が発生し,その後プレートテクトニクスが始まり大陸の形成とその移動が地表を支配するようになりました.プレート運動の結果,地表の物質は地球内部と循環し,その境界では定常的に地震が発生しています.さらに地表においては大気中の二酸化炭素の温室効果により,海が凍ることなく常に水として安定して存在できるようになりました.その中で生命が誕生し、光合成により酸素を発生し,生命が進出することができました.その酸素はオゾン層を形成しました.このオゾン層のおかげて強い紫外線が遮断され,陸上に生命が進出することができました.
このような「惑星地球」の進化のシナリオは地質学,物理学,化学,生物学という広い分野からの研究を統合して描かれるものです.そこで地球惑星科学科では他の理学部の学科とは異なり,まず幅広い知識と経験を持ってもらうために地質学,物理学,化学,生物学,数学に関する基礎を勉強します.さらに,実際の生きている地球を実感してもらうためにフィールドでの実習を重視します.また,地球と惑星を探るための様々な手法を身につけるため物理と化学の実験も重視します.
惑星学はあらゆる手法を用いて「惑星地球」を研究する学問です.それゆえ,地質学だけでなく物理が得意な人でも、化学が得意な人でも,また生物,数学が得意な人でも活躍の場が提供されています.地球・惑星のことを調べてみたいと思う人すべてにこの学科の門戸は開かれています.
最後に、地球惑星科学を志す皆さんに読むことをお勧めする本を紹介します。
- 「科学の方法」中谷宇吉郎著 岩波新書
- 「地球の物理」島津康男著 裳華房
- 「宇宙化学 コンドライトから見た原始太陽系」小沼直樹著 サイエンスハウス
- 「氷の科学」前野紀一著 北海道大学図書刊行会
- 「惑星地質学」宮本英昭他編 東京大学出版会